建物に合う植栽の選び方 植栽のバランス編

以前、自然樹形の樹木を用いた植栽の方法について、講習会をさせて頂きました。その際の講習内容の整理も兼ねて、新築の現場に植栽をレイアウトしていく際の考え方の一つをご紹介したいと思います。

このような一般的な新築物件を想定しています。『外構が終わったけど、植栽をどんな感じで植えたらいいのかわからないなぁ』という方は結構多いと思います。やはり一番多いのは、建物の前にシンボルツリーを植える!ということだけはなんとなくイメージしているけれど、実際に植えるのは何がいいのかわからない・・・決めきれない・・・という悩みループに陥ってしまっているパターンではないでしょうか。

まず門前のシンボル的な位置に、シンボルツリーを選びます。建物や外構の塀に近いこの部分には。大きくなり影を落とす常緑樹よりも落葉樹をお勧めしています。落葉樹は夏の暑い日に日陰を作り、太陽が恋しい冬の季節になると葉っぱを落としてくれます。アオダモ・ヤマボウシ・エゴノキなど、お勧めしたい樹木は多数あります。ただこの樹木、すらっとして線の細い美しい樹形ですが、目線の高さは少し寂しくも思えます。特に左右の空間が空いてしまっているような・・・。

そこで、今回は一つに絞り切れない…という方向けにも、『寄せ植え』という考え方をご紹介させて頂きます。左右の空いた空間に、それに合った樹形、スケールの樹木を植栽しましょう。種類としてはナツハゼ・ツツジなどのあまり大きくならない樹種がよいです。メインの樹木と合わせて、大中小の三角形になるように植栽することがポイントです。せっかくなので門柱にもかかっていくような樹形のものを選ぶとなお良いです。

また、アプローチも少し寂しいので、昔の『門冠りの松』を応用して、『木をくぐるアプローチ』のイメージを作りながら植栽していきます。見上げると緑が見える・・・美しいです。ここの樹木にはカエデなどの野趣的な樹形がおすすめです。

先ほどのアプローチに植えた樹木が実はいい仕事をしていまして、建物の角を柔らかく隠してくれています。同様に右側にも植栽していくことで、美術でいうところの『額物効果』に近い効果を得ることができます。建物が樹木の向こうに見えて、今までドーンと変に主張されてしまっていましたが、小さくまとまって見えます。同時に掃き出し窓の前が、道路からの目線が気になりそうなので、常緑樹を植栽します。

次に足元に植栽をしましょう。このように石を配置するとのっぺりとしがちな足元空間に立体感を出すことができます。この石の配置も三角形を意識して据え付けるとよいです。今回は同じ石を用いて掃き出し窓からのステップにもしてみました。

シンプルなコンクリート土間は植栽帯に囲まれることで一気に美しくなります。

このように出来上がりました。今回はいい位置に植栽桝があったため、バランスよく植栽をしていくことができましたが、実際の植栽工事のみの現場ではここに植えたいけど植えられない・・・。というようなことが多々あります。もし可能であれば外構から植栽まで含めて総合的にデザインさせて頂けることが理想です。